【行事報告】 第44回高圧討論会


 第44回高圧討論会は、平成15年11月21日(金)〜23日(日)に神奈川県横浜市の慶應義塾大学理工学部で開催されました。神奈川県での開催は、第29回(1988年、渡部康一準備委員長)から15年ぶりです。交通の便に恵まれ、360名を越す方々に討論会に参加していただきました。一般研究発表件数は、口頭発表144件、ポスター発表107件で、連日活発な討論が行われました。

 一般講演とは別に、2件のシンポジウム「計算科学と高圧力」と「MAX80誕生から20年」を企画しました。コンピュータシミュレーションによる研究は、実験結果の解析に重要な役割を果たすだけでなく、実験では調べることが困難なミクロな性質を明らかにできるため、最近は多くの研究が行われています。計算科学の利点や問題点についての総合的な発表が行われました。また、放射光施設に最初に設置された大型高圧力装置MAX80が稼動して20年になり、高圧討論会にも多くの発表が継続的に行われています。前史を含めてこの20年を振り返ることが、今後の研究のあり方を考える一助になるであろうと企画された後者では、多くのエピソードを交えた報告が行われ、高圧中性子実験計画にこれらの経験が生かされて成功するようにとの強い期待が相継ぎました。シンポジウに引き続き、J-PARK計画の高圧中性子ワーキンググループ会合が行われました。
 第1日目の夕刻には、ポスターセッション会場を利用して恒例の高圧若手の会(幹事:服部高典)が開催されました。おつまみを片手に熱心な討論が展開されました。次期の幹事は京大化研の斎藤高志氏に決まりました。

特別講演の米沢富美子氏 特別講演は、慶應義塾大学理工学部の米沢富美子教授にお願いし、「高圧力下の液体――理論的研究」と題する、最先端の研究紹介でありながらわかりやすい講演をしていただきました。「高圧力下の液体は、加圧や加熱により体積を広い範囲で小さくも大きくも変えることができるので、種々の転移など興味ある物性の変化が起こり、研究の宝庫である。ぜひ研究を拡げてほしい」と、特別講演を結ばれました。


八木新会長と学会賞受賞者(左から八木健彦氏・伊藤英司氏・久米徹二氏・土屋卓久氏) 引き続き、学会賞授与式が行われ、学会賞が岡山大学固体地球研究センターの伊藤英司氏に、奨励賞が岐阜大学工学部の久米徹二氏と東京工業大学大学院理工学研究科の土屋卓久氏に授与されました。学会賞の伊藤英司氏による受賞記念講演は、「川井式装置による地球内部探査」と題して行われ、川井研での多重アンビル装置の開発に始まって、岡山大学固体地球研究センターでの研究までを多くの写真や図を使ってお話いただきました。「装置開発は、目先の成果は少ないけれども、高圧力研究に欠かせないもので、重視すべきである」と締めくくられました。

 総会では近藤建一前会長による挨拶と、八木健彦新会長による所信表明がありました。引き続き、各幹事から報告があり、6つの議案が承認され、会則改正案も賛成多数で可決成立しました。
 総会後、会場を慶應義塾大学日吉キャンパスの日吉来往舎ファカルティラウンジに移し、恒例の懇親会が開催されました。会場の収容能力一杯の120名の参加で盛会になりました。八木新会長の挨拶の後、清水宏晏2001年度会長の音頭による乾杯で、懇親会がスタートしました。途中には学会各賞受賞者にスピーチをお願いいたしました。また、谷口吉弘第45回高圧討論会実行委員長から、次期討論会の紹介があり、琵琶湖のある滋賀県での討論会への参加が呼びかけられました。酒樽が開かれ、和やかにかつ盛大に懇談が行われ、予定時刻を過ぎたところで、辻和彦実行委員長から参加へのお礼と挨拶があり、おひらきとなりました。

 今回の討論会では、1.大学の教室を使用したため、設備に恵まれ、パワーポイントを用いたプロジェクターによる発表ができたこと、2.会期が大学祭期間に限定され、連休を含む日程になってしまったこと、3.要旨集の原稿締め切り期日を大幅に遅らせ、そのかわり、締め切りを厳守にしたこと、4.ポスター発表を3日間に分散させ、ポスター発表者も他のポスター発表を聞きやすくしたこと、5.このため、ポスター会場の参加者が予想よりも多くなり、込み合ってしまったこと、6.実行委員会と学会事務局の業務をできるだけ軽減するように努めたことなど、従来と大きく変わりました。参加者にとっては不便な点もあったと思いますが、参加者の協力で順調に開催できました。参加者の会場定着率もかなり高かったようで、実行委員一同心から感謝いたしております。

 最後になりましたが、今回の学会開催にあたり、ご協力いただきました講演者、参加者、座長、学会事務局、共催・協賛学協会、広告・展示をいただいた各企業の関係者、実行委員各位に心よりお礼申し上げます。

第44回高圧討論会実行委員長 辻和彦
(慶應義塾大学理工学部)