【行事報告】 第45回高圧討論会


 第45回高圧討論会は平成16年10月9日(土)〜11日(月)に滋賀県草津市の立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催されました。滋賀県での開催は高圧討論会の長い歴史の中で初めての開催で,高圧討論会始まって以来,過去最高の395名の参加者となりました。研究発表は口頭発表174件,ポスター発表127件で計301件となり,初めて300件の大台になりました。

 一般講演とは別に,シンポジウム「高圧極限環境条件下の生物科学最前線」を企画(企画委員長 谷口吉弘)しましたところ,3日間の開催期間をわりあてても収まりきれない講演発表の申し込みがあり,口頭発表を40件として,一部ポスター発表(11件)に回って頂きました。シンポジウムは,「高圧極限環境」に関する「機能食品の開発」「生体関連物質」「微生物・生物」「蛋白質」「生体水溶液と体積効果」「水溶液」の6つのサブテーマから構成し,わが国における高圧生物科学分野で活躍の,一部外国人研究者も参加して,第一線級の研究者から若手研究者まで,一同に会して討論いただき,大層有意義なシンポジウムとなりました。また,高圧力学会関係者にも生物科学分野が高圧力研究の大きな1分野であるとの認識を深めていただくよい機会になったものと思います。

 第1日目の夕刻には,会場の小教室を利用して,40歳未満の研究者による高圧若手の会・技術交流会(幹事:京大化研,斎藤高志)が,ポスター形式により開催されました。参加者は約45名で活発な討論が開催されました。次回の幹事は本年度と同じ京大化研の斎藤高志氏です。また,日本高圧力学会研究作業グループ「高圧力実験技術と中性子科学」の会合が行われ,約35人の参加者により口頭発表形式で夜8時ころまで,熱心な討論が行われました。この研究会は東海村に建設中の強力パルス中性子源に高圧実験装置を導入するための準備を進めるために発足したものです。これまでの活動状況の報告ののち,「東海村におけるパルス中性子源建設の状況,中性子とX線」,「装置シュミュレーションの途中経過」,「提案予定の高圧装置について」の講演に続いて,今後の方向について全体討論が行われました。次回は第46回高圧討論会にて開催予定で,担当者は鍵裕之氏(東大理学系)と永井隆哉氏(北大理学)です。

 第2日目は午前の一般講演に続いて,午後からポスター発表,特別講演,学会賞授与式,学会賞受賞記念講演,総会,懇親会と続きました。特別講演は近畿大学生物理工学部の赤坂一之氏にお願いし,「圧力軸から新しい蛋白質構造の世界が開かれる」と題する蛋白質の高圧力研究により,明らかにされた最新の研究成果を講演されました。聴衆が高圧固体関係者が多く,バイオ分野に必ずしも精通していない方々にもわかりやすい内容で,蛋白質の立体構造解明にとって高圧研究がいかに有意義であるかが示されました。引き続き,学会賞授賞式が行われ,学会賞は京都大学化学研究所の中原勝氏に,功労賞が葛ヲ和製作所 豊嶋識明氏に,奨励賞が東北大学大学院理学研究科の鈴木昭夫氏と慶応義塾大学理工学部の服部高典氏に授与されました。学会賞受賞者の中原勝氏による受賞記念講演は,「超臨界水および高圧条件下にある水溶液のNMRによる研究」と題して行われ,中原氏の高圧NMR研究の研究経過を,過去に出会った研究者の顔写真とともに,高圧NMR,高温高圧NMRの装置開発と超臨界水の微視的構造に関して講演が行われました。また,最近,高温高圧多核NMR装置により超臨界条件下における化学反応のその場観察を可能にして,超臨界水内無触媒反応を開拓して,新燃料開発,グリーンケミストリーおよび化学進化論についても述べられました。      















 総会では,八木健彦会長による2年目の所信表明がなされ,引き続き,各幹事から報告があり,2003年度事業・会計・監査報告および2004年度事業計画・予算・役員選任報告の6つの議案が賛成多数で承認されました。総会後,会場をリンクスクエアに移し,恒例の懇親会が開催されました。谷口吉弘実行委員長による歓迎の挨拶の後,高圧討論会の第1回からの参加者で,日本の高圧研究の最長老である鈴木啓三先生(立命館大学名誉教授)から「高圧は神の手であり,討論会50周年に向けて今後の発展を期待する」旨の祝辞をいただきました。谷口吉弘実行委員長の音頭で,八木健彦日本高圧力学会会長,各受賞者,城谷一民次期高圧討論会実行委員長らによる恒例の鏡割りが行われ,懇親会がスタートしました。途中には各学会賞受賞者によるスピーチをお願いしました。最後に,城谷一民第46回高圧討論会実行委員長から,室蘭の紹介を兼ねて次期討論会の紹介があり懇親会の幕を閉じました。

 第3日目には,懇親会で実行委員長が大学キャンパスの施設(特に放射光施設)を紹介したところ,多くの方から見学の依頼があり,急遽,ポータブル放射光施設の見学と放射光開発者による説明会を実施し,20名以上の参加者があり,熱心に開発者の話に耳を傾けておられました。

 今回の討論会では,開催前日,最強の台風22号(中心気圧920 hPa)が近畿を直撃するとの天気予報のため,討論会開催が危ぶまれましたが,幸い近畿地方をそれて関東方面に接近したため,1件の講演が取り消された程度で,大きな影響もなく無事開催することができました。また,本来第2回アジア高圧力国際会議(奈良)と合同開催の予定でしたが,諸般の事情で単独開催となり,大学キャンパス(草津)で開催することになりました。会場となる教室使用との関係で連休中に開催せざるを得ませんでした。このため,討論会の開催が例年よりも1ヶ月早まり,会員の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。また,連休中の開催でもあり,キャンパス中の食堂が日曜・祝日は利用できず,弁当で昼食を済ませる不便をもおかけしましたが,逆に,学生による教室などの使用もなく,余裕をもって討論会が実施できたのではないかと思います。昨年より実施されたパワーポイントを用いたプロジェクターによる発表も学生の努力のお陰で,大きなトラブルもなく実施でき,この種の発表が定着してきたとの印象を受けます。

 最後に,討論会開催にあたり,ご協力いただいた共催・協賛学協会,広告・展示・寄付をいただいた各企業関係者,実行委員会各位ならびに座長,講演者,参加者および学会事務局白岩千賀子さんと学生にお礼申し上げます。

                                       第45回高圧討論会実行委員長 谷口吉弘
                                                  (立命館大学理工学部)