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第48回高圧討論会 終了報告

第48回高圧討論会は2007年11月20日から11月22日まで鳥取県倉吉市の倉吉パークスクエアで開催されました。本州日本海側(山陰地方)では最初の開催となりました。参加者は370名を越え,発表件数は特別講演なども含め281件(口頭発表150件,ポスター発表131件)でした。これらの数字は大盛会であった昨年の熊本市での第47回討論会には及ばないものの,“平均値”を少し上回ったようです。実行委員会では当初当地の相対的な交通アクセスの悪さと宿泊施設の不足といったことが心配されましたが,これは完全な杞憂に終わりました。高圧討論会が高圧力研究者・技術者にとって成果発表・討論・交流の場として不可欠の重要な役割を持っていることの現れであり,参加各位に感謝いたします。


ポスター会場全景

今回は固体反応,固体物性,地球科学,流体反応,流体物性,衝撃圧縮の一般講演とともに装置技術(世話人:岡山大学山崎大輔氏),生体関連(世話人:徳島大学松木均氏),地球深部(世話人:岡山大学村上元彦氏)の三つのシンポジウムが開催されました。装置技術シンポでは招待講演者のYanbin Wang氏によるAPSにおける放射光と組み合わされた多目的モジュールプレスの紹介に始まり口頭,ポスター合わせて35件の発表がなされました。

装置は高圧力研究の根幹をなすものであり,中性子利用,計測法の開発,新たな加圧部材の性能,装置開発などをめぐって活発な討論が行われました。生体関連シンポでは生体高分子,食品加工,微生物・小動物および水溶液物性への高圧力研究が5件の依頼講演を含め16件発表されました。地球深部シンポでは口頭,ポスター合わせて20件の発表がなされ,地球マントル最下部の構成とポストペロフスカイト相転移との関連,下部マントルにおける鉄イオンのスピン転移がホットな話題となりました。1日目のセッション終了後,恒例の高圧若手の会(世話人:熊本大学佐々木満氏)と一昨年,昨年に引き続いての「高圧力実験技術と中性子科学2」(世話人:北海道大学永井隆哉氏)の会合が持たれ,それぞれ活発な交流と討論が行われました。


総会での功労賞授賞式

2日目は午前中の通常セッション,午後のポスターセッションに引き続いて,2件の特別講演,総会そして懇親会が行われました。最初の特別講演者,ピエール&マリー・キュリー大学のStefan KLOTZ氏は“Neutrons in High Pressure Research: Challenges and Opportunities”と題して,中性子利用法の基本からヨーロッパにおける高圧下での中性子回折,中性子非弾性散乱の現状のくわしい紹介とともに今後の展望を語られました。本邦J-PARCにおける高圧中性子利用ポートの建設にも示唆に富むものであったと思います。次の特別講演は趣を変えて鳥取大学乾燥地研究センターの篠田雅人氏「気候変動と干ばつ:乾燥地科学からのアプローチ」でした。氏は干ばつが長期間にわたって影響が蓄積される“忍び寄る災害”であると述べ,モンゴルでの研究を例に,夏の干ばつ冬の寒雪害による家畜の大量死が経済成長率の低下にいたったことを指摘,この対策として早期警戒システムの構築の必要性を強調されました。ここ数十年で顕在化してきた地球気候変動による災害の深刻さを改めて認識させられる講演でした。今年は学会賞講演がなかったので引き続き総会に移りました。青木勝敏会長の運営方針演説の後に2006年度事業・決算・監査報告が承認され,2007年度役員紹介,事業計画・予算の説明と承認がなされました。第7号議案として「シニア会員」制度の創設が提案され承認されました。また,2009年7月に東京で開催予定のAIRAPT-22に対して組織委員会を設立して支援する体制を整えたことが報告されました。続いて,総会の華,学会賞授与式が行われ本年度功労賞の大澤昭夫氏(有限会社 オーサワシステム),長谷川光雄氏(東京工業大学 応用セラミックス研),山本明氏(株式会社 アール・デー・サポート)の3氏に青木会長より賞状と記念品が授与されました。


懇親会恒例の鏡割り

懇親会は倉吉駅前のホテル・セントパレス2階宴会場で午後6時過ぎから福井宏之氏(理化学研究所)の司会によって始まりました。登録参加者は198名,招待者の方々やアルバイトの学生,院生さんを含めると総勢226名の参加となりました。これは昨年の熊本での懇親会を遥かに凌ぐ懇親会参加者数最高記録の更新だそうです。昨年,“カニを山のように用意してお待ちします。”の一言が奏功だったのでしょうか。実行委員長の歓迎開会の言葉,青木会長の挨拶に続いて恒例の鏡割りが行われ,若槻名誉会員の乾杯の音頭で酒宴・歓談・交歓に入りました。

懇親会でのポスター賞授賞式
宴たけなわとなったところでポスター賞の発表があり獲得した4名の大学院生に実行委員長から賞状が手渡されました。本年度は岡山理科大の森研究室から実に2名の獲得者が出ました。また,功労賞を受賞された3氏からご挨拶を頂きました。特別講演者の篠田氏,招待講演者のYanbin Wang氏,遠来ハワイ大のProf. Manghnaniなどたくさんの方々からスピーチを頂いてまた盛り上がったところで,お約束の“カニ”の登場となり,しばし静寂が戻ったのでしょうか。しかし,後援いただいた「とっとりコンベンションビューロー」から提供の鳥取県地酒23銘柄も手伝って,宴何時果てるともといった状況のところで終宴の時間となってしまいました。最後に実行委員会からの感謝のご挨拶の後,49回高圧討論会実行委員長の兵庫県立大川村春樹氏から一年後に姫路で再会しましょうという招待の言葉をいただいて終了となりました。

今回の討論会は会員の皆様のお陰を持ちまして講演・ポスター発表とも大変充実したものになったと思います。しかし,実行委員会の判断ミスでA会場が大変窮屈であったことをお詫びいたします。

最後になりましたが,今回の討論会開催に当たってご協力いただいた参加者,発表者,座長,招待講演者,学会事務局,岡山大学地球物質科学研究センター,岡山大学21世紀COEプログラム「固体地球科学の国際研究拠点」,(財)とっとりコンベンションセンター,また広告・展示を実施していただいた各企業の関係者,さらに円滑な運営を支えていただいた,学生院生のアルバイト,実行委員各位に厚く感謝いたします。

第48回高圧討論会実行委員長 伊藤英司

日本高圧力学会事務局
kouatsu_office(at)highpressure.jp