【行事報告】 第46回高圧討論会


 第46回高圧討論会は平成17年10月29-31日に北海道室蘭市の室蘭工業大学で開催されました。北海道での開催は,20年ほど前で本当にひさしぶりです。講演件数は281件(講演166件,ポスター115件)で昨年に比べれば,少ないものの例年よりも少し多い感じです。一般講演とは別に,2件のシンポジウムを企画しました。ひとつは「スクッテルダイト化合物の高圧合成と物性」です。これは高圧技術を用いた新物質開発に基づくものです。スクッテルダイト化合物は超伝導,金属−絶縁体転移,半導体,磁気転移,重い電子系など多様な物性を示すうえ,熱電材料としての応用研究も進められている優れた物質系です。現在特定研究が進行中で,高圧研究者以外でも多くの注目を集めています。もう一件は「最新技術による高圧地球科学の新展開」で,北海道という自然豊かな所で開催されることもあり,地球科学系に焦点を絞りました。焼結ダイヤを用いた超高圧力下での地球深部の物質合成や先端技術を用いた精密な物性測定など,地球科学の新たな発展を展望しました。

 1日目の一般講演の後,ポスターセッション会場を利用して,恒例の高圧若手の会(幹事齊藤高志氏)が開かれました。おつまみを片手に熱心な討論が展開されました。また「高圧力実験技術と中性子科学」の研究会も開催されています。
 2日目には特別講演,受賞講演,総会,懇親会と多くの行事がありました。また,最近室蘭工大に設置された高圧装置の見学会も実施されました。特別講演は地球科学系のシンポジウムに連動して北大の中川光弘先生による講演「火山噴火の中長期予測は可能か:北海道の活火山を例に」が行われました。講演を聴いていただけた方は,室蘭市のおかれている自然環境も理解できたのではないかと思います。引き続き学会賞授与式が行われ,学会賞が兵庫県立大学大学院の赤浜裕一氏に,奨励賞が京都大学化学研究所の齊藤高志氏と大阪大学大学院基礎工学研究科の菅原武氏に授与されました。赤浜氏の受賞講演は「マルチメガバールの高圧科学をめざして」と題して行われ,メガバールの世界の面白さが伝わってくる講演でありました。



 総会では八木健彦前会長による挨拶と,財部健一新会長による所信表明がありました。引き続き,各幹事から報告があり,6つの議案が承認されました。総会後,室蘭工大の学生会館で恒例の懇親会が開催されました。今年は参加者が約200名と多いのが印象的でした。財部新会長の挨拶の後,八木前会長の乾杯の音頭で,懇親会がスタートしました。今年度は例年と異なり若手奨励のためのポスター賞が実施されました。選考委員は高圧力学会役員(会長,副会長,評議員,編集委員長,同副委員長,高圧討論会実行委員長,会計監査役の23名)で,各審査員が優秀な講演を4件まで選んで投票し,多い順から4名選びました。選考の方法などさらに検討が必要と思われます。この4名のポスター賞の授賞式を懇親会の中で行いました。会場にはポスターも展示され,若手の研究者の励みになったと思われます。樽酒が割られ,和やかにかつ盛大に行われました。今年は北海道ということもあり,カニなどの北国の幸も出ましたし,量的にもかなりありましたので,それなりに満足いただけたのではないかと思いました。来年の第47回高圧討論会は熊本大学での開催が予定され,真下茂次期実行委員長の挨拶がありました。予定時刻に近づいた頃,城谷一民実行委員長より, 参加のお礼と実行委員の紹介が行われたあと,おひらきとなりました。



 今年はポスター賞が新たに作られました。選考方法など問題も浮かび上がってきたと思います。さらによくするため,今後どうしていくのか議論を深めていただきたいと思います。高圧討論会の4日ほど前,東京なら真冬の寒波がやってきました。まだ暖房が入らないこの時期は最も寒さを感じる季節です。討論会中にもあらたな寒波がくることは天気予報からわかっていましたので,大変心配でした。幸い予想していたよりは寒くならず助かりました。講義の関係で,3日目は会場を変更せざるをえなくなり,ご迷惑をおかけしました。参加者にとっていろいろ不便もあったと思いますが,なんとか順調に開催できたと思います。

 最後になりましたが,今回の学会開催にあたり,ご協力いただきました講演者,参加者,座長,学会事務局,共催・協賛学協会,広告・展示をいただいた各企業の関係者,実行委員各位に心よりお礼申し上げます。


第46回高圧討論会実行委員長
城谷一民 (室蘭工業大学工学部)