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第47回高圧討論会 終了報告

第47回高圧討論会は平成18年11月9日から11日まで熊本市の熊本市産業文化会館で開催されました。九州での開催は1999年の福岡以来の7年ぶり,熊本での開催は1992年以来の14年ぶりでした。参加登録者数は403名で400名を越え,講演件数は特別講演を含め355件(講演215件,ポスター140件)で,47年の高圧討論会の歴史の中で平成16年の草津での第45回討論会の395名,301件を凌いで新記録になりました。これは,高圧力研究がまだまだ発展中であることの証であり,次に熊本の自然と歴史の魅力によるものであったと考えています。

今年度は一般講演とは別に,4件のシンポジウムが開催されました。

会場風景
ひとつは熊本大学21世紀COEプログラムにリンクさせて企画した「衝撃エネルギー科学の最前線」(世話人:熊本大学 真下茂,外本和幸氏)です。例年の衝撃セッションの2-3倍以上の44件の発表件数で,熱気ある議論が行われました。財部会長肝いりの「水と生体分子の高圧生命科学」シンポジウム(世話人:立命館大学 谷口吉弘氏)は3年間継続した後,分野に固定させることを目指しており,招待講演を含め18件の発表が行われました。詳細は企画担当者より報告されます。「強相関電子系における圧力誘起量子相研究の新展開」シンポジウム(世話人:九州大学 巨海玄道氏)では,特に,最近話題の有機導体について最新の研究成果が報告されるなど活発な討論(発表件数20件)が行われました。「高圧高温下凝縮系物質の構造と物性,実験とシミュレーション」シンポジウム(世話人:熊本大学 吉朝朗氏,安仁屋勝氏)では,特に,超臨界や融体の構造解析とシミュレーションの新しい展開が見られ,活発な討論(発表件数10件)が行われました。

ポスター会場
さらに,1日目の一般講演の後,ポスターセッション会場を利用して,恒例の高圧若手の会(世話人:京都大学 齊藤高志氏)が開かれたほか,今年度は「高圧力実験技術と中性子科学2」(世話人:北海道大学 永井隆哉氏),「PFのビームライン統廃合について」(世話人:物質・材料研究機構 竹村謙一氏),「高圧耳寄り情報」(世話人:東京大学 上床美也氏)の3件の研究会や会合が並行して開催されました。

2日目には特別講演,受賞講演,総会,懇親会と多くの行事が行われました。今年度の特別講演は熊本大学の衝撃関連COEプログラムに関わりの深いお二方にお願いしました。

秋山秀典氏による特別講演
熊本大学の秋山秀典氏には「ナノパルスパワーによるプラズマの発生とその応用(環境,リサイクル,ナノテク,バイオ,エネルギーから医療応用まで)」という題目で,電気的パルスパワーを用いた独創的なプラズマの発生と幅広い応用のお話をしていただきました。

W. J. Nellis氏による特別講演
現在ハーバード大学のW. J. Nellis氏には「Dynamic compression of hydrogen: condensed matter physics, planetary science, novel materials, and inertial confinement fusion」という題目で,高圧研究のシンボルである金属水素を含む水素の衝撃超高圧研究の集大成と今後の展望についてお話していただきました。引き続き学会賞授与式が行われ,学会賞が慶応義塾大学の辻和彦氏(固体物性関連)に,功労賞が東北大学の福岡清人氏(衝撃関連)に,奨励賞が九州大学の久保友明氏(地球科学関連)と熊本大学の佐々木満氏(流体関連)に授与されました。

左から功労賞,学会賞,奨励賞受賞者
辻和彦氏の受賞講演は「高圧力下の液体の構造」と題して行われ,世界に先駆けて開発した放射光とマルチアンビルプレスを組みあわせた手法により,液体の構造が結晶と異なった多彩な圧力変化をすることを示し,高圧力研究に魅力的な新しい分野が拡がりつつあることが伝わってくる講演でした。総会では財部健一会長による挨拶と運営方針の説明がありました。引き続き,各幹事から報告があり,6つの議案が承認されました。ひとつだけ,電子ジャーナルに関して,予稿集も電子化できないかという質問がありましたが,今後の検討課題となりました。

総会後,懇親会が会場近くの熊本交通センタ−ホテルにおいて,実行委員外本和幸氏の司会で盛大に開催されました。参加者数は登録が約178名で,招待者を含めるとこれもこれまでの最高となりました。財部会長,熊本大学工学部長の谷口功氏,今回,特別講演をしていただき,現在,AIRAPT会長をされているW. J. Nellis氏の挨拶の後,

懇親会での樽酒の鏡割り
樽酒の鏡割りが行われ,実行委員会顧問の九州大学の巨海玄道氏の乾杯の音頭で酒宴がスタートしました。一段落してから,昨年から始まったポスター賞の授賞式(4件)が懇親会の中で行われました。

米原亀生氏らによる二天一流の披露
後半に入ると,宮本武蔵の二天一流がその直系の米原亀生氏らによって披露され,この時ばかりは会場は静まり返りました。また,室町以来の歴史を持つ山鹿灯籠踊りが保存会によって披露され,優雅な雰囲気で会場が盛り上がりました。鳥取県倉吉市で開催が予定されている来年の高圧討論会実行委員長である岡山大学の伊藤英司氏からは「松葉ガニをたくさん用意して待っています」といううれしい招待の挨拶がありました。終了に際しては,学会本部の白岩さんとアルバイト学生諸氏に感謝の言葉が贈られた後,

山鹿灯籠踊り
熊本大学理学部長の古島幹男氏によって最後のご挨拶とおひらきの一本締めが行われました。

今回の討論会は参加者数,発表件数,懇親会参加者数どれも予想を上回る熱気のある学会になりましたが, 終止,会場が満杯気味で,ポスター会場も一部会館が改装中であったために窮屈でありました。逆に,特別講演,受賞講演の会場(600名収容)は大きすぎたようです。しかし,会場は交通の便もよく,使用料も安く上がりました。一方,発表時間を15分にせざるをえなくなって,十分な討論の時間が確保できていたか心配しています。今回,参加料などの支払いを会場の都合により振込に限りましたが,特別問題はなかったように思います。この他で気づいたこととしては,記録によると第43回の討論会ではOHP主体だったそうですが,今回はOHPは使われなかったようです。OHPを各会場に準備しておくべきかどうかは今後の課題です。

最後になりましたが,今回の討論会開催にあたり,ご協力いただきました講演者,参加者,座長,招待講演者,学会事務局,熊本大学,熊本県,熊本産文会館,熊本国際観光コンベンション協会,広告・展示を実施していただいた各企業の関係者,実行委員各位に心よりお礼申し上げます。

第47回高圧討論会実行委員長
真下 茂 (熊本大学衝撃極限環境研究センター)

日本高圧力学会事務局
kouatsu_office(at)highpressure.jp