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高圧力研究の創造と継承への支援

日本高圧力学会会長 松木 均(徳島大学 大学院社会産業理工学研究部)

清水会長近影   私の高圧力研究との出会いは、学部生として研究室に配属された1980年代後半に遡ります。そもそも私はすぐに高圧力研究に手を染めていたわけではなく、博士論文研究までは常圧実験をしていました。ただ、研究室では高圧実験を行っており、大学院生の先輩や同級生が大掛かりな研究装置で圧力実験に取り組んでいるのを、何か面白そうなことをしているなと、興味深く傍から眺めていました。当時、高圧力研究をご専門にされていた金品昌志先生が研究室のゼミに来られていたこともあり、金品先生が徳島に異動する際に縁あって私も同行させていただきました。赴任後に金品先生から圧力実験の知識や技術をご教授いただき、高圧力研究を開始しました。初めて高圧討論会で発表したのが、1992年の熊本開催の討論会でした。以来、30余年、実験手法として高圧力を主軸に据えた研究活動を行ってきました。その間、高圧力学会の企画幹事や学会誌の編集委員長として役員業務や高圧討論会の実行委員として討論会運営に携わり、一昨年の副会長を経て、この度会長に選任いただきました。歴史と伝統ある高圧力学会の会長を拝命しましたことは大変栄誉であり恐縮しておりますが、これから学会活動に対して精力的に取り組む所存ですので、どうぞ宜しくお願いいたします。
   昨年5月に新型コロナウイルス感染症が第5類感染症へと移行し、皆様も安堵されていることと存じます。しかしながら、コロナ禍の期間中、学会活動は非常に大きな影響を受けました。予定されていた催事や行事は、コロナ禍当初は中止や延期となり、その後は全て遠隔開催となりました。特に、学会誌に関しましては、委託印刷所の変更や会誌書式の改定なども相俟って、その刊行が大幅に遅延してしまい、現在でも会員の皆様が学会サービスをしっかり享受できない状態になっています。このような状況を引き起こしましたことを、この場をお借りして深くお詫びを申し上げると同時に、状況の回復まで編集委員会と共に最善を尽くして取り組みますので、もう暫くの期間、ご容赦いただければと存じます。
   第64回の高圧討論会は、23年ぶりに千葉柏において完全対面形式にて実施されました。討論会では、懇親会も4年ぶりにほぼ通常形式で開催されました。懇親会場一杯に沢山の方々が和気あいあいとご歓談され、大盛況を呈していた様子を見るにつれ、漸くコロナ禍も終焉も迎えたことをあらためて実感しました。討論会の総会において学会の現状について説明させていただいたように、現在、持続的な会員数の漸減、物価上昇に伴う会計収支の圧迫、若手会員の育成と助成、学会宣伝活動の強化といった過去よりの継続的な課題に加え、先に述べたコロナ禍に起因する学会誌の刊行遅延問題も生じています。コロナ禍では、不自由な生活を強いられましたが、半面、IT通信技術が顕著に発展し、社会に一気に普及しました。災い転じて福となす的なこの恩恵を有効活用し、学会業務のDX化(オンライン会議の充実、セミナーなどの活動成果のデータベース化、間もなく公開される新学会ホームページによる研究PR活動など)を推進することで財政削減を行いながら、学会運営の効率化・合理化を図っていきます。
   高圧力研究が有する独自性と研究進展へのポテンシャルは、他の分野に比べて比類ないものがあります。事実、私自身、留学中の研究活動において高圧力研究に窮地を救われ(29巻4号の巻頭言を参照)、その後の研究展開の強力な武器となりました。この高圧力が拓く新たな研究世界の創造を学会として全力で支援し、次世代へ継承すべく尽力させていただきます。2025年には愛媛でAIRAPT-29が開催されることも踏まえ、評議員と幹事の皆様のお力をお借りしながら,この2年間責務を果たして参りますので、会員の皆様には、ご支援とご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

〒770-8513 徳島市南常三島町2-1 徳島大学 大学院社会産業理工学研究部
Graduate School of Technology, Industrial and Social Sciences, Tokushima University, 2-1 Minamijosanjima-cho, Tokushima 770-8513
Electronic address: matsuki(at)tokushima-u.ac.jp ※(at)は@に置き換えてください。


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日本高圧力学会事務局
kouatsu_office(at)highpressure.jp