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会長の挨拶 2016年

異分野間の交流促進に向けて

日本高圧力学会会長 谷口 尚(物質・材料研究機構)

  本学会では,若手の育成,国際化の推進と共に,異分野間交流の促進が重要との認識は会員に共通のものであり,高圧討論会,学会誌,そして学会主催セミナーがその重要な機会と言えましょう。圧力を巧みに制御した新物質・材料の創製や高圧力下での物質の振る舞いを明らかにする為の研究は,有機,無機,金属,高分子から溶液まで様々な分野での共通の興味の対象です。50年以上の歴史を持つ高圧討論会はその研究発表の場として欧米やアジア諸国と比べても極めて高いレベルを堅持しており,物質科学,地球科学から生物・流体に至る多様な分野に裾野を拡げています。この分野間の交流の促進により新しい発想が生み出され,またこれが若手の育成,会員数の増強にも繋がると期待されます。
 本学会は,次年度から約20年ぶりの会費値上げに踏み切りました。現在の財政状態は健全ですが,消費税の値上げ等も踏まえ,今後10年間を見据えた財政予測による判断です。その上で,私はこれまでに諸先輩方が築かれた財産・伝統を継承しつつ,とりわけ学会内の異分野間交流の促進に以前にも増して積極的に取り組むことが重要と考えています。
 高圧討論会での高いレベルでの発表の場は研究者間の交流として格好な訳ですが,4つの並列セッションではどうしても各自の専門分野の聴講に偏りがちで,更に夕刻はインフォーマルミーティングが設定されるなど,なかなか異分野間の交流が難しいのが現状と思われます。そこで,50年以上の歴史を持つ高圧討論会ですが,時勢に即した変革を試みても良いのではないでしょうか? いわば欧州版の高圧討論会(EHPRG)は本会とほぼ同じ発表件数ですが,5日間の開催期間中に2~3の並列セッションや全体講演,若手の授賞講演等を設けてゆったりしています。また,米ゴードン会議ではMbarとkbarの2チームに分かれてのサッカーの交流試合等が催されていました。EHPRG開催は9月初頭であり,同じ試みは10-11月開催の本討論会では大学の授業日程等による困難が予想されますが,当面可能な挑戦をすることは意義があると思われます。高圧討論会は学会よりも歴史が長く,私自身はその開催は実行委員長の意向を尊重すべきとの認識です。同時に,従来の慣習に従うだけでなく,良いと思われることに積極的に取り組む上では学会執行部と討論会実行委員会の連携,そして何よりも会員の皆様のご支援が重要です。
 評議員・幹事の皆様のご協力を仰ぎながら,この2年間積極的な活動を進めたく存じます。引き続き,賛助会員,個人会員の皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1 物質・材料研究機構先端材料プロセスユニット超高圧グループ
Ultra-High Pressure Processes Group, Materials Processing Unit, Advanced Key Technologies Division, National Institute for Materials Science, 1-1 Namiki, Tsukuba, Ibaraki 305-0044

《高圧力の科学と技術 第26巻第1号(2016年3月1日発行)巻頭言》


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